不貞慰謝料の時効——「知った時」から3年の数え方
不貞行為の慰謝料を請求する権利は、不貞の事実と相手が誰かを知った時から3年で時効を迎えます(民法724条1号)。知らないままでも、不貞行為の時から20年たてば請求できなくなります(同条2号)。3年は長く見えます。けれど証拠を集め、相手を特定し、話し合いを重ねていると、思いのほか早く過ぎます。
「知った時」には、相手が誰かを知ることまで含まれる
時効の3年が数え始められるのは、不貞があったと知った時ではなく、「損害」と「加害者」の両方を知った時です。裁判所は、加害者を知った時の意味を「賠償を請求することが事実上可能な程度に知った時」と解釈しています(最高裁昭和48年11月16日判決)。
不貞相手に請求する場面に当てはめると、相手の氏名や住所など、請求できる程度の情報を知った時が起算点になります。配偶者の不貞には気づいていても、相手がどこの誰か分からない。その間、相手に対する3年の時効は進みません。
配偶者への請求は、離婚するかどうかで扱いが変わる
配偶者に対する慰謝料には、二つの見方があります。不貞行為そのものによる精神的苦痛への慰謝料と、不貞が原因で離婚に至ったことへの慰謝料です。離婚する場合は後者として請求するのが一般的で、この場合の時効は離婚が成立した時から3年です。
また、夫婦の一方が他方に対して持つ権利は、婚姻が解消されてから6か月を過ぎるまで、時効が完成しません(民法159条)。婚姻中に3年がたってしまっても、離婚してから6か月の間は請求できる余地が残ります。
不貞相手に「離婚させられたこと」の慰謝料は、原則として請求できない
不貞相手に対しては、不貞行為そのものの慰謝料を請求できます。一方、「離婚に至ったこと」への慰謝料は、特段の事情がない限り不貞相手には請求できないと、最高裁が判断しています(最高裁平成31年2月19日判決)。離婚させる目的で夫婦関係に不当に干渉した、といった事情が必要になります。
このため、不貞相手に対する請求の時効は、離婚の時ではなく、不貞の事実と相手を知った時から数えるのが基本です。離婚の話し合いが長引いている間に、不貞相手への時効だけが先に来ることがあります。順番を取り違えないでください。
時効は、請求の手続きを取れば止められる
時効が迫っている場合は、進行を止める手段があります。
裁判を起こせば、時効の完成は猶予され、判決などで権利が確定すると新たに時効が数え直されます。内容証明郵便などで請求(催告)すれば、その時から6か月は時効が完成しません(民法150条)。ただし、使えるのは一度きりです。その6か月の間に、裁判などの手続きを取る必要があります。相手と話し合いを続けることを書面で合意した場合も、一定の期間は時効が完成しません(民法151条)。
慰謝料の相場は、離婚するかどうかで大きく変わる
裁判になった場合の慰謝料は、離婚しない場合で数十万円から100万円程度、不貞が原因で離婚に至った場合で100万円から300万円程度が目安と言われます。不貞の期間や回数、婚姻期間の長さ、子どもの有無などで変わります。
どちらにしても、証拠がなければ請求は成り立ちません。時効の期限と、証拠がそろうまでの時間の両方を見て、動く時期を決めてください。
個別の事情で時効の数え方は変わります。期限が気になる場合は、早めに弁護士に相談してください。法テラス(日本司法支援センター)では、収入などの条件を満たせば無料で法律相談を受けられます。
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